物件価格800万以下の不動産売買、報酬最大33万円へ – 低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例
空き家の流通を後押しするため、国土交通省は宅地建物取引業者の報酬規定の改正に踏み切る。既存の空き家売買用の特例を、800万円以下(現行400万円以下)の物件まで対象を拡大したうえで、報酬の上限も原則を超えた33万円に引き上げる。報酬規定の改正は6年ぶり。売買特例の大幅拡充に加え、新たに賃貸用の空き家の報酬特例も創設する方針だ。
宅建業者が受領できる報酬(仲介手数料)の上限は、宅地建物取引業法に基づく大臣告示が定めている。売買の場合、売主・買主の一方から受け取れる報酬額は、物件価格に応じて一定の料率を乗じて得た額の合計金額以内。社会課題となっている地方部の空き家は価格が低く、実入りが少ないため、宅建業者が空き家をビジネスで扱ううえで大きな課題となっていた。
国交省は、7月1日から、売買を対象とする「低廉な空家等の媒介特例」(18年1月1日施行)を拡充する。現行では、物件価格400万円以下の宅地建物を対象に、売主からのみ最大18万円×1.1(19.8万円)まで報酬を受領できる。これを同日から800万円以下の物件まで対象を広げる。また、報酬の上限も最大「30万円×1.1(33万円)」に引き上げる(図)。更に、買主からも最大33万円の報酬を受け取れるようにする。宅建業者による空き家ビジネスへの積極参加を促すのがねらいだ。
800万円以上の物件の売買の報酬は従来通り。これまでは、物件価格が400万円超の場合、報酬上限を簡易に計算する速算式として「3%+6万円」が用いられてきた。7月1日以降は、速算式が使えるのは800万円以上の物件になる。
賃貸借を対象にした新たな「長期の空家等の媒介特例」も創設する。賃貸借取引の場合、原則の報酬上限は「借主と貸主の合計で1カ月分の借賃×1.1の金額以内」。居住用建物だと「依頼者の一方から1カ月分の借賃×0.55の金額以内」になる。(依頼者の承諾を得ている場合は除く)。
長期間使用されていない、または将来使用の見込みがない空き家は「貸主から原則による上限を超えて報酬を受領できる」とし、特例を適用した場合の報酬は「合計して1カ月分の借賃×2.2」までとする。報酬額全体は1カ月分の借賃の2.2倍へ増えるが、新たに上乗せできるのは貸主からの報酬のみ。まだ市場に出ていない空き家を流通させることを考えた場合に、賃料設定のための物件調査業務など、通常の賃貸仲介では発生しない貸主側の業務が増えるため。
国交省は5月2日に告示の改正案を意見公募(パブリックコメント)で公表した。告示改正は6月にまとめる「不動産業による空き家対策推進プログラム(仮称)」の一環。意見公募の後、改正告示はプログラム策定と合わせて公布、7月1日の施行予定。報酬告示は1970年の施行以降、改正は18年に次ぎ2度目。
(提供:日刊不動産経済通信)